「ゼロキロ中古車の増大は中国EVにどのような結果を生み出すのか」
中国の自動車市場では近年、「ゼロキロ中古車(新古車)」が急増しています。これは、名義上は中古車でありながら、実際にはほとんど走行していない新車同然の車両が、中古車市場や海外へ流通する現象です。背景には、メーカーやディーラーによる販売台数の水増し、在庫圧力の解消、補助金制度の悪用など、業界構造の歪みが複雑に絡み合っています。特に新エネルギー車(EV)分野で顕著なこの現象は、中国EV産業の健全な成長にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
BYD EV-TECH LAB | BYD Auto Japan株式会社
もくじ
1. ゼロキロ中古車とは何か
2. ゼロキロ中古車急増の背景
3. 中国EVメーカーへの短期的影響
4. 長期的な市場・産業構造へのリスク
5. 海外市場・国際競争への波及
6. 政策・規制強化の動きと今後の展望
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1. ゼロキロ中古車とは何か
ゼロキロ中古車とは、法的にはすでに登録・名義変更を経て「中古車」とされているものの、実際にはほぼ未走行の新車同然の車両を指します。こうした車両は新車よりも安価に中古車市場や輸出ルートで販売され、市場に大きな影響を与えています[1][3][5]。
2. ゼロキロ中古車急増の背景
ゼロキロ中古車が急増している主な要因は以下の通りです。
- メーカーが販売台数を見かけ上増やすため、ディーラーや第三者名義で一度登録し「販売実績」を計上する[1]。
- 在庫圧力の高まりや市場需要の読み違いにより、ディーラーが新車を「中古車」として早期に処分する[1][5]。
- 新エネルギー車(NEV)に対する購入税免除や補助金制度の抜け穴を利用し、メーカー・ディーラー双方が利益を得る構図[1][2][5]。
- モデルチェンジや価格変動が激しいEV市場特有の事情[5]。
3. 中国EVメーカーへの短期的影響
短期的には、ゼロキロ中古車の増大は以下のような「メリット」をもたらしています。
- 販売実績の水増しによる企業イメージの維持[1][2]。
- 在庫圧縮と資金繰りの改善[5]。
- 補助金獲得による収益確保[1][2]。
しかし、これらは表面的な好調を演出する一方で、実態を伴わない「虚構の成長」となりやすいです。
4. 長期的な市場・産業構造へのリスク
ゼロキロ中古車の氾濫は、以下のような深刻なリスクをもたらします。
- 新車・中古車価格体系の混乱とブランド価値の毀損[1][5]。
- 流通秩序の破壊と消費者信頼の低下[5]。
- メーカーの財務健全性悪化や「隠れ債務」問題の顕在化[2][4]。
- 業界全体の過剰生産・過当競争の長期化[1][4]。
5. 海外市場・国際競争への波及
ゼロキロ中古車の多くは、輸出資格の制限回避や在庫処分のため、海外市場にも流出しています。2024年には中国から約27万台の新エネルギー中古車が輸出され、その9割以上が実質的に「ゼロキロ中古車」とされています[5][8]。この動きは国際市場の価格競争や秩序にも影響を及ぼし、各国で問題視され始めています[8]。
6. 政策・規制強化の動きと今後の展望
中国政府は、ゼロキロ中古車の増加が財務不正や市場の混乱を招いていることを重く見て、メーカーや業界団体を招集し規制強化の議論を進めています[1][3][6]。今後は政策の見直しや監視体制の強化が進む見通しですが、業界全体の自律と構造改革が求められています[5]。
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中国EV業界におけるゼロキロ中古車の増大は、短期的な「成長」の裏で、長期的な市場の健全性や国際競争力に大きな課題を投げかけています。
[1] https://mobyinfo.com/market/china-zero-km-used-cars-emergency-meeting/
[2] https://news.yahoo.co.jp/articles/6911646b960d342b206e299c9c26023720785fb8?page=2
[3] https://www.recordchina.co.jp/b953894-s25-c20-d0190.html
[4] https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/88907?page=3
[5] https://mobyinfo.com/market/zero-mile-used-cars-market-reaches-1-million/
[6] https://news.yahoo.co.jp/articles/74f98f3c7bbc413089bed0adaa511548568e9b29
[7] https://www.recordchina.co.jp/pics.php?id=953894
[8] https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/06/b35eb16b618607e4.html
あとがき
一番怖いのは生産すぎたEVがデッドストックとなることであろう。
EVはリチウムを使っているから長期に在庫すると火災の心配がある。
水分がクルマに侵入してリチウムに触れると火災が発生する。
もしEVの在庫の山だと大火災が心配だ。
## EVの大量在庫化と火災リスク
EV(電気自動車)の過剰生産による「デッドストック化」が進むと、未販売車両が大量に保管される状況が生まれます。このとき、最大の懸念の一つがリチウムイオン電池の火災リスクです。
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**リチウムイオン電池の火災リスク**
- EVに使われるリチウムイオン電池は高いエネルギー密度を持ち、発火リスク自体は低いものの、一度火災が発生すると鎮火が非常に難しいという特徴があります[1][3]。
- 火災の主な原因には、バッテリーのショート(短絡)、過充電、過放電、外部からの衝撃、製造不良などが挙げられます[2]。
- 長期間の在庫保管中に、バッテリーが過放電や劣化を起こすと、内部でショートや熱暴走が発生しやすくなります[2][4]。
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**水分侵入によるリスク**
- EVの車体に水分が侵入し、バッテリーに直接触れることで発火するケースは一般的ではありませんが、バッテリーの密閉性が損なわれたり、外部からの損傷がある場合には、内部でショートが起きて発火するリスクが高まります[2][3]。
- 特に大量の在庫車両が屋外や適切な管理のない場所に長期間保管されると、外部環境による劣化や損傷のリスクが増大します[3]。
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**大量在庫時の大規模火災リスク**
- EVのデッドストックが山積みになると、万が一火災が発生した場合に被害が拡大しやすくなります。リチウムイオン電池の火災は消火が困難で、通常の火災よりも大量の水を必要とし、煙も有毒です[3][6]。
- 仏保険業界でも、リチウムイオン電池の大量保管や輸送時の火災リスクが高まっていることを警戒しています[3]。
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## まとめ
EVの過剰生産による大量在庫は、リチウムイオン電池の特性上、火災リスクを高める重大な問題です。特に、適切な在庫管理や安全対策が不十分な場合、万が一の火災が大規模な災害につながる可能性があります[1][2][3]。
[1] https://ev-charge-enechange.jp/articles/164/
[2] https://primestar.co.jp/elcolumn/li-ion_fire-prev/
[3] https://www.parisettoi.fr/news/20241121-001/
[4] https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/09919/
[5] https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2410/15/news011.html
[6] https://www.rescuenow.co.jp/blog/column_20230131
[7] https://www.standard-club.com/ja/knowledge-news/vehicle-carriers-risk-from-lithium-ion-li-ion-battery-electric-vehicles-evs-3985/
BYDがその危険性があるという。